自治体クラウドとは
1.概要
従来、各自治体は庁舎内に設置されたコンピューターで、自治体ごとの個別に構築されたシステムによって業務処理を行ってきました。
総務省はこれらの情報システム及び住民基本台帳・税務・福祉のような行政に関するデータを、データセンター内にて管理・運用し、システムを複数の自治体で共同利用することを推進しています。これを「自治体クラウド」と呼んでいます。
下記のようなイメージになります。
引用元:総務省「自治体クラウドの導入促進の取組」より
2.自治体クラウドに期待されている効果
総務省が掲げているクラウド利用による効果は以下の4点です。
- 情報システムの運用コストが3割程度削減可能
- 集中監視により情報セキュリティ水準が向上
- 庁舎が被災しても業務継続が可能
- 参加自治体間で業務の共通化及び標準化
総務省が平成30年3月30日に発表した調査結果によれば、日本全国の市区町村において情報システムにかかっている費用は4,786億円(平成29年度当初予算額)のようです。仮にこの費用の内2/3が自治体クラウド以外の情報システムだとして、これを3割程度削減できると仮定すると、その金額は956億円になります。かなりの効果が期待できると言えます。
また、東日本大震災の経験から災害対策を考慮し、行政関係のデータはデータセンターで管理した方が良いという考えが広まっています。グループ内で「人(職員)・物(PC、システム)・場所(庁舎)」を相互に連携し、グループ内のどこでも罹災証明書を発行できるようにする相互支援協定を、自治体クラウドとセットで導入する事例も増えています。これにより、災害時の業務継続性が向上しています。
将来的には全ての自治体がいずれかのグループに属し、自治体クラウドと相互支援協定に加入することになるかもしれません。
3.政府の動き
政府が自治体クラウドを推進する動きとして、下記のような資料が出ています。
- ①「地方公共団体におけるクラウド導入の促進に向けての提言」(平成29年5月18日自民党政務調査会)より一部抜粋・・・
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- クラウド活用が災害にも極めて効果的で地方行政の分野においてもその導入が不可欠
- わが国の現状は、自治体におけるクラウドに関する認識不足、情報不足、特に国のリーダーシップ不足、取組不足が顕著。
- 政府においては不退転の決意でクラウドの強力な導入推進を図るよう、強く求める。
- ②「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)(抄)より一部抜粋・・・
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- 自治体クラウドの一層の推進に向け、各団体はクラウド導入等の計画を策定し、国は進捗を管理する。IT人材の更なる確保・育成に取り組む。
- ③世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(平成30年6月15日閣議決定)(抄)より一部抜粋・・・
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- 自治体クラウド導入により、コストの削減、業務の共通化・標準化、情報セキュリティ水準の向上、災害時の業務継続性の確保といった効果が期待できる。
- 一層のコスト削減効果が見込める複数団体による共同化を行う自治体クラウド導入団体数については、約1,100団体となるよう取り組むこととする。
4.自治体クラウド利用の将来構想
総務省より、「地方公共団体におけるクラウド導入に係るロードマップ」が公表されています。
引用元:総務省「自治体クラウドの導入促進の取組」より
これによれば、2019年度には自治体クラウドの成果の横展開及び検討会の結果を踏まえた自治体クラウド化を推進し、2020年度以降は共同利用の規模の拡大を図りながら、最終的には全自治体でのクラウド利用を目指すとしています。
5.自治体クラウドの導入を支援する地方財政措置
自治体クラウドを導入する際、交付税措置が取られます。総務省から公表されている「自治体クラウドの推進に係る特別交付税措置」の対象経費は下記の通りです。
- 共同化計画に要する経費
- 導入コンサルタントに要する経費
- データ移行経費
- 実務処理研修に要する経費
- 新システムの安定稼働のためのコンサルタントに要する経費
算定方法は、「上記対象経費の内特別交付税の算定の基礎として総務大臣が調査した額×0.5×財政力補正」です。
「自治体クラウドの推進に係る普通交付税措置」の対象経費は、自治体クラウドの導入に必要な業務システムの標準化及びハードウェア整備等に係る経費や、データ移行作業に係る経費です。
6.まとめ
単に「クラウド」と言われると、それこそ雲のように漠然としたイメージを持ってしまいがちですが、「自治体クラウド」は具体的なメリットが公表されており、既に導入している自治体が増えてきています。財政措置もされており、国が導入を推進しているということもありますので、システム更新の検討においては避けて通れないものと考えた方がよいでしょう。
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